地域に密着した百貨店内の公園で子どもの成長に寄り添う体験を
〜高槻阪急スクエア×OpEL.のものづくり教室〜

高槻阪急スクエア

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  • #インタビュー
地域に密着した百貨店内の公園で子どもの成長に寄り添う体験を〜高槻阪急スクエア×OpEL.のものづくり教室〜

Introduction

OpEL.のホームページ開設に合わせて、一緒にプロジェクトを進めているパートナーの皆さまと、出会いからの経緯や今後の展望などについて語り合う座談会を企画しました。高槻阪急スクエアさんとは、2024年から「埴輪(はにわ)」「バードコール」「スノードーム」などのものづくり教室を、店舗内にある「たかつきけやきパーク」で開催してきました。今回は、このプロジェクトに関わってくださった阪急阪神百貨店の今岡憲俊さん、大友美保さんに、OpEL.の宿野と倉橋を交えてお話をしてきました。

Profile

今岡憲俊
株式会社阪急阪神百貨店 第3店舗グループ ファッション・ライフスタイル商品・専門店リーシング統括部 地域コンテンツ開発部バイヤー。 2023年度より現在の部署を担当。地域共創コンテンツ開発のプロジェクトリーダーとして店舗と連携し、コンテンツ展開と継続取り組み、および取組先との協業商品開発を推進している。

大友美保
株式会社阪急阪神百貨店 高槻阪急スクエア ファッション・ライフスタイル営業部 アシスタントマネージャー。2023年10月の「たかつきけやきパーク」のオープンに携わり、現在はけやきパークイベント担当として、ファミリー向けイベントの企画・運営を担当している。

Talk

10年後も地域で支持されるお店であり続けるために

——高槻阪急スクエアさんとOpEL.はどんなきっかけで出会いましたか?

今岡憲俊(以下、今岡):コロナ禍で飲食店を元気にしようというプロジェクトに参加していたのですが、そこで京都信用金庫さんに出会い、そこから京都信用金庫さんが運営されている「QUESTION」という多分野の人が集まる施設に繋がりました。OpEL.さんのことも京都信用金庫の方に紹介していただきました。

今岡憲俊さん

宿野秀晴(以下、宿野):そのときは、大規模なマルシェを開催されるということで、紹介していただきましたね。

宿野秀晴 OpEL. 代表取締役

——高槻阪急スクエアさんはどのような課題をお持ちですか?

今岡:高槻阪急スクエアに限ったことではありませんが百貨店業界は、若い世代、特に子育て世代の30〜40代くらいのお客さまとの接点が、だんだんと少なくなってきています未来を見据え次世代との接点をどのように持つのかが最大の課題と認識しています。郊外のお店は地元のお客さまと密着しています。そのメリットをどう活かしていくかがポイントです。

——高槻阪急スクエアへのリモデル以降、“課題”と認識されている30〜40代のお客さんが、実は増えているそうですね。その原因は何ですか?

今岡:リモデルをしたときに1階につくった「たかつきけやきパーク」が要因の一つだと認識しています。雨の日でも安心して遊べる室内公園で、滑り台などの遊具を使って遊べる「わいわいひろば」、300冊もの絵本を揃えた「よむよむひろば」、さらに「はいはいひろば」というのもあって、赤ちゃんも楽しめるつくりになっています。これは以前の百貨店では考えられない取り組みなんです。たかつきけやきパークのような空間をつくることは、本当にイレギュラーなことでした。たかつきけやきパークの効果は非常に大きくて、オープン以降、平日・週末ともに来店者数が増加し続けています。

宿野:今いる階は子ども服の売り場が近いのですが、そろっているお洋服はとてもセンスがいいですね。

今岡:ありがとうございます。今までは百貨店と取引をされたことがないブランドも、お客さまの
ニーズに基づき出店を検討していただいています。

型にはめたものづくり教室ではなく
子どもが発想したものを具現化したい!

——既に成功されているといってもいい状況かと思いますが、次のステップも計画されているんですか?

今岡:例えば今、月1回来ていただいているお客さまに、月2回来てもらうにはどうすればいいのか? といったことを考えています。そういった課題を持ち出すと、現在はオンラインでの繋がりに注力しがちですけど、やはり私たちの店=最寄りの店なので、お客さまとどういう風にリアルで繋がっていくのかを重要視しています。

そこで、「本当のニーズ」を知るアクションを始めました。今までは売り手発想で「どうですか?」と提案していたのですが、お客さまにニーズをお聞きすることを始めたんです。この地域のお客さまにとって“なくてはならない”、そんな百貨店になっていくことが目標ですね。

——OpEL.にはどういったところに期待をされていますか?

今岡:たかつきけやきパークはお客さまに集まっていただくきっかけとしてつくりましたが、今後はここに来られたお客さまが望んでおられることを実現していかなければと考えました。そこで、OpEL.さんに協力をお願いしたんです。

OpEL.さんの考え方で私が共感したのは、「子どもが発想するものを実現する」というところです。世の中にはいろんなものづくりのワークショップがありますが、だいたいは「できあがりの形」というか、完成品が決まっているんですよね。そうではなく、子どもの夢を具現化していくことができるのは魅力的だと思います。

ワークショップでは、こちらからゴールを決めず、子どもたちがつくりたいものを自分で設計してつくってもらうことを心がけています。
ワークショップでは、こちらからゴールを決めず、子どもたちがつくりたいものを自分で設計してつくってもらうことを心がけています。

その地域ならではの魅力や
季節感を大切にしたものづくり体験

——どのようなワークショップを開催されたんですか?

倉橋克彦(以下、倉橋):印象的だったのは埴輪(はにわ)をつくるワークショップですね。大きいお子さんは3Dプリンターで、小さなお子さんは温めると軟らかくなるカラフルな樹脂粘土を使って、いろんな形の埴輪をつくりました。完成後は店舗内に期間限定で設置した「今城塚古墳」のジオラマに並べて展示しました。

今城塚古墳は高槻市にあるとても大きな古墳で、一般の人も入って遊べる珍しい場所です。周囲にはたくさんの埴輪のレプリカが並べられているので、地域の人たちにとっても埴輪は身近なもの。たかつきPR係長のゆるキャラ「はにたん」も有名ですよね。

OpEL. 倉橋克彦
ハニワをつくるワークショップ。高学年の参加者は3Dのお絵かきソフトを使って、自分が考えたハニワの3Dデータを制作しました(上)。低学年の参加者は、お湯に浸けると柔らかくなり冷えると固まる樹脂粘土を使って、色とりどりの光るハニワをつくりました(下)。

ハニワをつくるワークショップ。高学年の参加者は3Dのお絵かきソフトを使って、自分が考えたハニワの3Dデータを制作しました(上)。低学年の参加者は、お湯に浸けると柔らかくなり冷えると固まる樹脂粘土を使って、色とりどりの光るハニワをつくりました(下)。

できあがった作品は、高槻阪急スクエアのリニューアル1周年記念にあわせて、今城塚古墳を模した古墳ジオラマのまわりに飾って展示しました! 参加した子どもたちは、家族や友達といっしょに見に来てくれました。

できあがった作品は、高槻阪急スクエアのリニューアル1周年記念にあわせて、今城塚古墳を模した古墳ジオラマのまわりに飾って展示しました! 参加した子どもたちは、家族や友達といっしょに見に来てくれました。

大友美保(以下、大友):本当にいろいろな形の埴輪ができていましたね。OpEL.さんのワークショップでは、埴輪のように地域性を活かしたものだけでなく、季節性を活かしたものも実施していただきました。秋には鳥の鳴き声のような音がするバードコールづくり、冬にはスノードームづくりのワークショップを開催しましたね。

大友美保さん
鳥の鳴き声のような音が鳴る「バードコール」をつくるワークショップ。ボール盤という電動工具を使って、木材の端材に穴を開ける男の子
鳥の鳴き声のような音が鳴る「バードコール」をつくるワークショップ。ボール盤という電動工具を使って、木材の端材に穴を開ける男の子
「スノードーム」をつくるワークショップ。ラメがキラキラ輝きながらゆっくりと舞い落ちるようすを、うっとり眺める女の子
「スノードーム」をつくるワークショップ。ラメがキラキラ輝きながらゆっくりと舞い落ちるようすを、うっとり眺める女の子

今岡:目標は、赤ちゃんからスタートして、お子さんが成長していくその時々に寄り添うことで、お客さまとずっとお付き合いをしていくことです。子どもの成長を見ることができるコンテンツは意外と少ないので、ワークショップを含めて、全ての年齢のお子さんとそのご家族に寄り添えるものを計画していきたいですね。

宿野:僕らは“場”が欲しかったので、高槻阪急スクエアさんとお互いにwin-winでできたら、これほどいい関係はないなと感じています。つくりながら学ぶというのが我々のコンセプトです。結果を求めずに、子どもの考え方や発想に寄り添って、できあがったものを喜んでもらいたいなと思っていて、そのためには親も体験する機会を増やしていきたいんです。長く寄り添いながら、定期的なスクールのような形にできればいいですよね。でも、そもそもこの企画が始まったのって、今年(2024年)のことなんですよね!

今岡:そうなんですよね!まだ1年足らずなのに、こんなにたくさんのワークショップを開催できました。出会ってから一気にばく進してますね(笑)我々には“場”を提供できるだけなく、お客さまに広げる力、お届けする手段があるのだなと再認識しましたね。

——OpEL.はたかつきけやきパークという場で、どのようにアプローチしようと思いましたか?

倉橋:僕はまず、お店の中にこんな公園みたいな空間があって面白いなと思いました。箱のような形の什器たちも面白いですよね、組み替えれば、椅子にも机にもなるんですよ。今までの経験で、机の高さって子どもたちの動きに影響するので、いろいろなスタイルを試せるのはいいなと思いました。

実際にワークショップを始めると、参加者以外の子どももたくさん見に来てくれましたね。まだまだちっちゃくて、参加は難しそうな子も見ているんです。「楽しそうやな」っていう顔で(笑)。「たかつきけやきパークはいつも楽しそうなことしてる」っていうのが定着していって欲しいですね。

高槻阪急スクエアの担当の方がちょうどママ世代だったので、何がその世代に共感を得られるのかという意見を聞きながら、一緒にワークショップをつくり上げられたのも、貴重な経験でした。

——実際のワークショップをご覧になって、どのように感じられましたか?

大友:もともと高槻には、子どもの教育に熱心な方が多いんです。科学を取り入れたワークショップは珍しいですから、皆さん楽しみにされていたんだと感じました。科学館まで行かなくても、身近な場所で科学を体験して学べるのはいいですよね。親子で楽しみながら学べて、自分のつくったものを持ち帰れるとあって、満足度も高かったようです。3Dプリンターのように普段は目にしないものを見られたり、目の前で実験してもらえたりするので、お子さんたちは目を輝かせていました。

ハニワの3Dデータを出力するための3Dプリンターを眺める参加者の親子
ハニワの3Dデータを出力するための3Dプリンターを眺める参加者の親子

宿野:予約制ですが、予約を取っていない方々も外から見れるというのはいいですよね。こういったワークショップを、子どもも親も求めているんだと実際に肌で感じられました。

子どもの成長段階に寄り添った
“リアル”な体験プログラムを継続的に提供したい

——たかつきけやきパークの今後の目標を教えてください。

今岡:年に2回、規模の大きいマルシェを開催します。その会場には、高槻阪急スクエアに普段来られないお客さんが来館される場合があるんですけど、「公園があったなんて知らなかった」と、たかつきけやきパークのことをご存じない方も多くて。だから、まずはパークの認知度を高めていきたいです。

プログラムの企画についても考えていることがあります。子ども向けの催しを計画するときに、子どもの年齢を段階的に捉えて計画することは難しいですよね。未来に繋がらない、ピンポイントな、短絡的なものになりがちです。それでは、この店の将来のためにならない。ですから、赤ちゃんからスタートして成長に合わせたプログラムを総合的に構築して、継続的にお子さんと接点を持てるようにしたい。そうすれば、将来大人になってもこの店を絶対に利用してくれるはず。これを実現していきたいなと思っています。

宿野:それは、みんなにとっての課題といえるかもしれませんね。物語性というか、プログラム同士がどのように繋がっていくかが分かるようにしていかなければいけないのかも。

今岡:そうなんです。プログラム同士が“点”になってしまうと、お客さまは「?」になってしまいます。だから、プログラム同士が繋がって“線”になり、どのように続いていくのかということが分かるようにしてあげれば、お客さまの認識が変わる。そこからリアルなコミュニティが生まれるんだと思っているんです。合わせて、郊外型の店ですから、時間の制約のある子育て世代がふらっと来て参加できる、というのも大事ですね。

宿野:子ども向けのプログラムと思っているけれど、実はターゲットは親なんです。今の親はものづくりや科学に疎遠になっていることが多い。でもたかつきけやきパークに来れば、自分では教えられないものづくりや科学のことを、楽しく教えてくれる場と人がいるんだと知れば、親子で来てくれるようになると思っています。

親子で「身近なところに科学がいっぱいある」と気付いてもらって、科学的思考をすれば面白いものづくりができると知ってもらいたいです。それが、0→1の思考やSTEAM教育に繋がっていきます。STEAM教育は分野横断的な学びです。縦横で分断された学び方では、もう教育は成立しない。だから、縦横に繋がりコミュニティをつくりながら、学びを深めていってもらいたいですね。

今岡:「子ども向け」のプログラムは極端に言えば「子どもだまし」になる可能性があると思っています。だから親も楽しめること、よりリアルなことを目指していった方がいい。先日、別の企画で、子どもの職業体験を開催したんです。そこでいろんな種類の職業を体験できるプログラムを用意したのですが、人気があったのは「よりリアルなもの」。楽しそうな職業でも、リアルではない体験は、なぜか不人気なんです。あまりの落差にびっくりしました。

宿野:体験型のものは今とても求められているなと感じます。でも、本当の体験をするには、本物の現場、本物の職人でないと無理なんですよね。その場や人が放つ雰囲気を、子どもは五感で感じるのだと思います。そういったリアルな体験を求められているというのは、いい傾向ですね。

今岡:食育なども体験をやるべきだと私は思います。スマホでレシピを見る、料理をつくる実演をモニターで流す……ではだめです。実際の現場に行って、体験できることが大事なんです。これからは体験することによって、“感動”を提供していきたい。無茶苦茶なことをいうなら、毎週末に農業体験をするとかね。そういったお客さまの興味関心のあるプログラムを用意して、参加してもらう。そして、それが直接の事業に繋がるようにしていきたいです。

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