アートとテクノロジーの融合でイノベーションが生まれる
〜マクセル×OpEL.の「てづくりレンズで世界をのぞこう!」〜

マクセル株式会社

work

  • #インタビュー
アートとテクノロジーの融合でイノベーションが生まれる〜マクセル×OpEL.の「てづくりレンズで世界をのぞこう!」〜

Introduction

OpEL.のホームページ開設に合わせて、一緒にプロジェクトを進めているパートナーの皆様と、出会いからの経緯や今後の展望などについて語り合う座談会を企画しました。2024年に開催した、マクセルさんとのコラボレーション企画、「てづくりレンズで世界をのぞこう!」というワークショップの話題を中心に、アートとテクノロジーの融合やSTEAM教育などについて、マクセルの齋藤浩之さん、寺井晋矢さん、遠藤豪さん、村上叶さんと、OpEL.の宿野と倉橋がお話をしてきました。

Profile

齋藤浩之
法人営業、営業サポートに従事。日立グループ企業への出向を経て、広報IRや経営企画、ブランド戦略に携わる。2024年4月よりコーポレート・ブランディング業務を担当している。

寺井晋矢
京都事業所の工場管理に従事。その後、兵庫県小野事業所への異動を経て2019年に帰任し全社のアセット管理を担当している。

遠藤豪
新規開発案件の設計・開発業務を担当。2024年4月よりクセがあるスタジオ関連の業務も担当。企画案の検討・立案・実行や、プロジェクトの方向性の検討を行っている。

村上叶
マクセル本社・グループ会社で経理業務に従事。2024年5月よりブランド推進・企画に携わる。クセがあるスタジオで実施のイベント「てづくりレンズで世界をのぞこう!」を担当。

Talk

マクセルブース「クセがあるスタジオ」で行う「教育・学びのコンテンツ」を通して、
マクセルのアナログコア技術「まぜる」「ぬる」「かためる」を
若い人たちに知ってもらいたい

——マクセルさんとOpEL.のご縁はどのように始まりましたか?

宿野秀晴(以下、宿野):2023年の10月に、アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都(以下ATVK)ができるということで、京都府内の中小企業を支援している公益財団法人「京都産業21」が中心になって「子どもの能力開発部会」が立ち上がりました。部会には多くの企業や大学などが参加されて、交流や議論が進められています。OpEL.も子どもの能力開発に携わっているので参加することになりました。マクセルの寺井さんとその部会で、「機会があったらご一緒したいですね」とお話ししたんです。そして、2024年1月に「一緒に新しい体験教室を考えてもらいたい」とご相談をいただいて、具体的にプロジェクトを進めていくことになりました。

宿野秀晴 代表取締役

——ワークショップを計画するにあたって、どのような課題や背景がありましたか?

齋藤浩之(以下、齋藤):当社は1961年に創業し、現在は、創業製品である電池や、粘着テープなどの機能性部材料、自動車向け光学部品などを主力事業としています。50年以上日立グループの一員でしたが、2017年には「日立」の冠がとれた「マクセル」になり、独立しました。

私が所属するブランド部門はこの時期に組織化されました。手始めに「我々はどのくらい世間に知られているのか」を調査したんです。すると、20代の認知度が20%前半しかないということが分かりました。若年層の知名度を高めるために、小学生・中学生など若い方々とコミュニケーションを取る必要があると判断し、我々の事業「まぜる」「ぬる」「かためる」のアナログコア技術に繋がるものをテーマに、関東圏を中心に、光学レンズや粘着テープなどのワークショップを始めました。

そんな折、ATVKの中にマクセルの「クセがあるスタジオ」をつくることになったんですよね。

齋藤浩之さん

寺井晋矢(以下、寺井):そうですね。実はここATVKはマクセル敷地の一部を京都府へお貸しして、次世代を担う人材の育成やアートとテクノロジーを融合した新たな産業創造するオープンイノベーション拠点として誕生したのですが、我々もこれまでリーチできなかったアーティストやエンジニアの方々との交流や地域貢献などができる自社ブースを建てたいと考え、「クセがあるスタジオ」を完成させました。これからのモノづくりにはアート思考も必要だと思いますし、ここで得られる感性や感動も製品開発に役立つと考えています。

クセがあるスタジオには、ワークショップ、アート展示、ミートアップ、配信などの機能があるので、ぜひOpEL.さんと一緒に、東京でのワークショップの経験を踏まえて、新しいワークショップが企画できればと思いました。

寺井晋矢さん

アートとテクノロジーが融合することで
「0から1が生み出される」

——課題を解決するためにOpEL.からどんなワークショップを提案しましたか?

宿野:課題はこの施設の名前「アート&テクノロジー」そのものです。今まで、アートはアートだけ、テクノロジーはテクノロジーだけ、それぞれに分断されてきました。子どもの頃から、文系/理系で分かれてしまって、接点がなくなってしまいますよね。でも、「何か開発しよう」「0から1を生み出そう」としたとき、分断からは何も生まれないんです。何かをつくろうとしたときに、文系の人がアイデアを出しても、形にするには理系の技術が必要なことが多い。それならばと、両方をマッチさせるときに、私たちが続けてきた「STEAM教育(科学、技術、工学、アート、数学)」の考え方が必須になってくるんです。
子どもだけでなく一緒にいる親も含めて、STEAM教育を今から伝えていくために、「つくりながら知る」ワークショップを提案しました。手を使ってつくっている最中、脳は確実に動いています。その瞬間に理系の言葉だけでなく、メーカーさんの魅力も、子どもと親の両者に伝えられると考えたんです。

倉橋克彦(以下、倉橋):具体的なワークショップの内容は、マクセルさんのアナログコア技術から「まぜる」「かためる」をテーマに、レジンという紫外線で固まる樹脂を使って、光学レンズを実際につくってみるというものです。光学レンズを科学的に教えるだけでなく、どうやってつくられているのかという技術的な面や、どうやって設計しているのかという工学的な面も意識しました。クイズを出したり、レジンという素材を学んだりした後で、一度レンズをつくります。一回目の経験を元に、他の形にしたら景色の見え方が変わるんじゃないか、どうすればきれいにできるのかと複数回、試行錯誤しながらつくりました。ただの教室というより、研究開発に近い体験をしてもらえたかと思います。
OpEL.が単独で企画するよりも、実際に製品を世の中に届けてこられたマクセルさんとコラボすることによって、子どもたちが得られるものの幅がとんでもなく広がったと感じました。

倉橋克彦

紫外線を当てると固まる「UVレジン」をシリコンの型に流し込んでレンズをつくりました(上)。紫外線を当てながら待つこと4分。取り出してみると、丸い形に固まった透明なレンズができあがりました(下)。

子どもだけでなく親も一緒になって
つくりながら学べるワークショップ

——実際に開催されたワークショップについて、どのように感じられましたか?

寺井:実際に開催したもの以外にも、例えばカセットテープをつくるワークショップなど、いろいろなアイデアをご提案いただきましたね。

当社では若年層に興味を持ってもらうというところに課題があったので、いかに子どもたちなど若い方々をターゲットにしてワークショップを作り上げ、運営していくのか、OpEL.さんのプロセスを拝見できて、非常に勉強になったと感じています。

倉橋:マクセルの方々にはワークショップ当日、ファシリテーターとして参加者の子どもがいるテーブルについていただきました。子どもたちの生の感想を聞いていただけたのではないかと思います。

齋藤:私も会場で子どもたちの反応を見ていました。
緊張してドキドキしている子もいれば、楽しくてワクワクしている子もいました。倉橋さんが説明をして、いざつくりましょう! という段階になると、子どもは集中するんですね。子どもってやっぱり、つくることが好きなんだなと感じました。
レジンをモールドという型に入れて、紫外線を当てる機械に入れるんです。それで数分経つと、自分のレンズができあがる。すると子どもは「自分のつくったレンズだぞ」という風に我が物顔になるんです。一つ目を経て二つ目、三つ目と、どんどん工夫がプラスされていきます。ビーズを入れてきれいにしたり、文字の形のレンズにしてみたりと、子どもの発想力や柔軟さを生で見られたのは良かったですし、「ものができて嬉しい」という喜びや感動が生まれるプロセスに携われたのも貴重な経験です。
宿野さんもおっしゃっていましたが、親御さんもつくるのに加わったシーンもあって、親子間のコミュニケーションを育めたのも良かったです。親子で楽しみながら「マクセル」を知っていただけると、我々も嬉しいですよね。

子どもたちは自分でつくったレンズを目線の高さに掲げ、片目を強くつむって、レンズ越しの少し歪んだ世界をのぞいていました。
子どもたちは自分でつくったレンズを目線の高さに掲げ、片目を強くつむって、レンズ越しの少し歪んだ世界をのぞいていました。

宿野:本当にそうですね。今は子どもだけでなく、親もものをつくれないんです。つくっていないのに、インターネットを見て、分かったつもりになっちゃう。でも子どもには結果なんて考えずにものをつくりあげる力があるのだから、その姿を親御さんには見て欲しいなと思います。子どもには無限の可能性があるのだから、規制をかけるのではなく、どう伸ばしていくかをみんなで考えていきたいんです。

子どもの「気づき」をしっかり受け止めて
発想力やイノベーション力を伸ばすには

——ワークショップ当日の様子を教えてください。

齋藤:実は、ワークショップ当日はびっくりするような大雨で、警報も出ていたんです(笑)。でもそんな雨天の中でも、みなさん期待してくださったのか、来ていただけました。そんな過酷な状況の中でも参加してくださったのは、コンテンツの強さがあってこそと感じましたね。

倉橋:「クセがあるスタジオ」はガラス窓の部分がとても多い造りになっているので、雨がどんどん流れて外の景色が歪んで見えたんです。機転を利かせて、この現象もレンズの話と結びつけたりしましたね(笑)。

この日の午後に大雨警報が発表され、横殴りの大雨が降りました。ガラス窓に点々と張りついた雨粒ひとつひとつにも、逆さに歪んだ向こう側の風景が映り込み、レンズのように見えていました。
この日の午後に大雨警報が発表され、横殴りの大雨が降りました。ガラス窓に点々と張りついた雨粒ひとつひとつにも、逆さに歪んだ向こう側の風景が映り込み、レンズのように見えていました。

村上叶(以下、村上):私は東京のブランド推進部にいるのですが、こういったワークショップは初めての経験でした。OpEL.さんにしっかりサポートしていただきながら当日を迎えました。

ワークショップの中で、マクセルのキーワードを紹介することや製品動画を流すことをお願いしていたのですが、どれも唐突に登場させるのではなく、ワークショップの流れに自然に入れ込んでもらえたのでありがたかったです。

当日は、子どもと保護者の一体感がすごく伝わってきて感動しましたし、子どもの発想力にびっくりしました。最初につくるレンズは半球なんですが、それを二つ合わせて球体に仕上げる子もいましたし、家に持ち帰ったあとレンズの裏にマグネットをつけて冷蔵庫に飾りたいとアイデアを出す子もいました。

それと、進行中の要所要所で「何か気づきがあった人」という問いかけを倉橋さんがしてくださるんですが、それも良かったなと思っています。問いかける側にも技術が求められますし、子どもの声に共感し、会話されている様子も勉強になりました。

村上叶さん
子どもたちに問いかけると、気づいたことをたくさん話してくれます。
子どもたちに問いかけると、気づいたことをたくさん話してくれます。

倉橋:問いかけをするときは、本当に好きなことを聞くようにしていますし、お子さんからの質問には「すごく興味があるよ!」という気持ちで返すようにしています。

宿野:私も問いに対する答えは必要ないと思っています。「私も分からないなあ!」と返していい。その後で、子どもが分からないことを探し出すための行動を自らとれるようになれば、今まさに企業が求めているような人材へ成長していけるのだと思うんです。

齋藤:そうですね。本当に正解って、なかなか見つからないものです。答えというよりは「何が大事なのかという課題感」「新しいものをつくっていく上での発想力」「イノベーション力」を持つことが大切なんじゃないかと感じます。

遠藤豪(以下、遠藤):イノベーションといえば、私の所属する部署は新事業統括本部といって、名前の通り新しい事業を開拓していくことがミッションです。オープンイノベーションを活用しながら新事業を創出するにあたって、ATVKやクセがあるスタジオなども門戸にしていきたいと考えています。
今回のワークショップは非常に素晴らしいものでしたし、お子さんが体験をするということがとても大事なことなんだと感じました。学校で勉強するだけでなく、実際に触って自分で何かをつくること自体に刺激がありますし、ものづくりの面白さを体験することで、将来エンジニアになっていくようなお子さんたちにとっても、とてもいい経験になったのではないかと思います。大きくなって20年後、イノベーションを起こすような人になって欲しいですね。

遠藤豪さん(写真左)

これからATVKやクセがあるスタジオで
チャレンジしていきたいこと

——これから先どういった展開を希望されますか?

齋藤:以前のマクセルはB to Cの企業でしたが、だんだんとB to Bにシフトしてきました。B to Bとしてのブランディングを進めていくうえで、ものづくりメーカーとして我々の認知度を高めていくことを考えると、やはりこういった体験教室の活動が重要だと感じています。そうした場として、このクセがあるスタジオを活かして、地域の方々にも参加していただける体験を、ぜひOpEL.さんには一緒に続けていただきたいですね。もっともっといろいろな可能性を深めていけたらなと思っています。

寺井:私は、ここ「クセがあるスタジオ」での地域交流を通して、マクセルをもっと広く知ってもらって、好きになってもらいたいと思っています。

遠藤:ATVKはアートとテクノロジーから新しい事業を生み出していくところですから、このクセがあるスタジオを活かして、アートとテクノロジーを融合させて次に繋げていきたいと思います。我々はメーカーですから、アートと我々のテクノロジー・技術を融合させて、新しい製品をお届けしていきたいです。

倉橋:ワークショップを実施する中で、マクセルさんが何をめざしているのかというところが、少しずつ見えてきて、この技術がこういった製品に繋がっているのだなという発見もありました。そういった気づきを、また次の新しいワークショップとして具体化させていきたいです。

村上:OpEL.さんはワークショップ当日だけではなくて、当日までのプロセスやリハーサルも、とっても大切にされていました。今回のイベントが大盛況に終わることができたのもOpEL.さんのサポートのおかげですし、今後も一緒にワークショップを企画できると嬉しいです。同じ京都の企業同士ですから、繋がり合ってお互いの強みを活かすことができるといいですよね。

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