記憶に残る、織と美。受け継がれる伝統の技を伝えたい──京都まなびの街 生き方探究館の展示製作
川島織物セルコン
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目次
Outline
こどもに興味をもってもらえる新しい展示をつくりたい
京都府庁の近くにある「京都まなびの街 生き方探究館」。ものづくり企業の創業者の夢や情熱に触れ、こどもたちが自分の生き方を考えるというコンセプトのもと、16のブースが設置されています。西陣織企業の川島織物セルコンもブースを設置していますが、こどもたちに織物について興味をもってもらえる新しい展示をつくりたいとOpEL.が相談を受けました。
Approach
展示パネルを「織物」でつくる
織物の会社のことを伝えるには「織物で伝えるのが一番」ということで、織物を写真のように表現できる独自技術「EPOTEX(エポテックス)」とクッション材を張り込んだ壁面装飾「FAB-ACE(ファブエース)」という2つの川島織物セルコンの独自技術を生かして、「全面を織物で表現したい」との構想をお持ちでした。そこで、織物できれいに表現するためのデザインについて話し合いながら試行錯誤し、グラフィックのデザインとデータ制作をOpEL.が担当しました。
「実物」にこだわる、できるだけ触れる
新しい展示では、織物でできた作品や製品だけでなく「織物をつくる道具、素材としての糸、繊細な色を表現する技術も伝えたい」とご要望をいただきました。そこで、タテ糸とヨコ糸を交差させて織物をつくる「織機」の実物を展示するのはどうかと提案しました。さらに、来館者の安全性が保たれているかと、展示物が傷まないかを考慮したうえで、できるだけ触りながら実物を観察できることを目指しました。


Outcome
リニューアル後の展示



「織物」のグラフィックを美しく見せる
先ほども触れましたが、今回の展示パネルは、文字も写真も、全部「織物」なんです! 見出しにある「だ」の文字に近づいてみると……たしかに、水色に混じって白いタテ糸が見えますね。「二代川島甚兵衞」の顔写真に近寄ってみると……白と黒の糸に混じって、ところどころに赤や黄色や緑の糸が見え、微妙な陰影を表現していることに気づきました。


グラフィック制作での工夫ポイント

織物でも見やすい文字サイズや表現に
織物で出力したときに文字や写真が見えにくくならないか、試し織で確かめてもらいながら、文字のサイズ感を調整しました。さらに、細い線や透明化したオブジェクトを重ねるなどの表現を避けるなど、織物で出力しやすいように配慮しました。
狭いながらも「余白」を感じるエリア分け
今回の展示では、織機の実物を設置するのにともない壁面の一部が使えなくなったため、情報を工夫して配置する必要がありました。できるだけ余白を設けるために、“ぼやっとしたエリア分け”を意識しました。完全に囲まずに色とデザインを工夫し、セクションごとのエリア分けが来館者に伝わるように工夫しました。
小学生に合わせて、膝下のエリアも活用
生き方探究館の床には柔らかいカーペットが敷かれており、小学生が座り込んで下の方まで熱心に展示パネルを見ている姿を、よく目にしました。そこで、通常ではあまり活用しない膝からすねあたりの高さまで、グラフィックのエリアを拡げました。
実物を観察できる「織機、糸、道具」
糸は繊細なシルクの糸も含まれていたので、アクリルカバーを施しました。シルク(絹)、レーヨン、ポリエステル、コットン(綿)の4種類です。輪っかに束ねた糸を壁にかけるように展示し、素材ごとの太さの違い、発色の違い、質感の違いを感じ取れるように工夫しました。


道具は、職人の方が実際に使っていたものをお借りしました。使い込まれた木の艶や傷が味わい深いですね。「職人さんの大切な道具を破損することなく触れられるように展示したい」というご要望を踏まえ、壁に固定する部分ができるだけ目立たないように、かつ、来館者に触られても外れないように、透明で耐久性のある合成繊維を使って固定しました。


色を表現する技術「糸をまぜる、色をぼかす」
繊細な色の違いを表現するために、細かい工夫が施されています。そのひとつが「杢糸(もくいと)」です。色の異なる複数の糸をより合わせたものを杢糸と呼び、微妙な色の変化をつくりだしています。さらに、杢糸の色の組み合わせを細かく変えて、グラデーションを表現しています。以前、工場見学をさせていただいた際に、見せてもらった展示方法を参考にして提案しました。

手織りの細かさの違いを比べる
右壁面の奥では、手織りの実物を展示しています。舞台や劇場にある大きな幕「緞帳」、タテ糸が隠れるほどヨコ糸を詰めて打ち込む「綴織の帯」、祇園祭など祭の山鉾に飾られる「祭礼幕」の3種類です。


展示をじっくり見てもらうための工夫ポイント
「問いかけ」で観察をうながす
「3cmの中にタテ糸は何本ある?」 貴重な作品をじっくり観察してもらうために、このような問いかけを添えました。一番細かい祭礼幕では、85本も詰まっているらしいです! 問いかけをきっかけに、祭礼幕の細かい表現や、ギザギザの爪でヨコ糸をかき寄せる技術に、思いをはせてもらえたらうれしいです。
さらに、緞帳をじっくり見てみると……、一見、同じ色に見える糸も、実は、杢糸の色の組み合わせを微妙に変えていたり、金色に輝く糸が混ざっていてキラキラ光って見えることに気づきます。近づけば近づくほど面白いので、ぜひ糸の一本一本までじっくり味わって観察してみてくださいね!


「身近なもの」に例える
主な対象である小学生に伝えるための工夫として、身近なものに例えることを心がけました。緞帳をつくるための織機は幅が25メートルもあるのですが、「小学校のプールと同じくらいの長さ」もあります、と小学生がイメージしやすいものに例えました。
クッションやカーテンなど身近な製品も
「身近なところにも織物が使われているんだ」と知ってもらうため、川島織物セルコンで実際に販売している製品のうち、お部屋を彩る織物の実物展示についてもご提案しました。光の当たり方で陰影が変化し立体感を感じるクッションに、淡い色彩の花柄のテーブル飾り、元気が出そうな柄のラグ、「3つ山2倍ヒダ」の華やかなカーテン ──。




カーテンを開くと……1843年創業を伝えるタイポグラフィと、未来に向けたメッセージが。「未来を伝えるパートでは、子どもたちに希望を持ってもらえるような展示にしたい」というご要望を踏まえ、明朝体の縦書きを採用し、下から見上げると照明を反射してキラキラ輝いているように見えるデザインに仕上げました。「記憶に残る、織と美。」は、川島織物セルコンの180周年記念で発表されたテーマです。こちらをご使用いただくこともご提案しました。


工場にはカラフルな糸が並んでいる
正面には、緞帳に使われる糸の見本をずらりと並べました。工場の中を見学させていただいた時、数え切れないほどたくさんの色に染められた糸が並んでいました。今回の展示でもカラフルな糸を並べることで、工場のリアルな雰囲気を伝えたいと考えました。糸が巻かれている筒の先には、実際に使われたときに割り振られた色番号のシールが、残っているものもあります。


京都市内の小学校では4年生のときに全員、校外学習で「京都まなびの街 生き方探究館」を訪れます。また、春夏秋冬と年に4回開かれる一般公開で、どなたでも見学できます。機会があればぜひ、川島織物セルコンの新しくなった展示ブースをご覧ください!
Voice
川島織物セルコン ご担当者様
「織物」を子どもたちに分かりやすく伝えるため、さまざまなアイデアをご提案いただきました。私たちには当たり前に見えていた内容も、お子様目線で理解しやすい表現へと落とし込んでいただき、大変勉強になりました。
また、織物の上からの什器設置といったイレギュラーな条件にも柔軟にご対応いただきました。おかげさまで、来場者の皆さまに楽しみながら学んでいただけるブースとなりました。
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