「こどもたちが不思議を見つけて膨らませることを応援したい」
──京都市青少年科学センターの展示製作と体験を深めるワークショップの実践
稲盛財団
work
- #宇宙
- #展示
- #稲盛財団

目次
Outline
こどもたちが不思議を見つける、体験型の新しい展示をつくりたい
稲盛財団さんは「こどもたちが不思議を見つけて、自ら深め、連鎖的に増やすことを応援する」ことをコンセプトに掲げる「こどものキヅキ応援プロジェクト」を実践しています。これまでに、夏休みの科学の祭典「こども科学博」や、身のまわりの不思議を見つけるウェブサイト「キヅキランド」、少人数での体験ワークショップ「キヅキひろば」などに取り組んでいます。今回、稲盛財団さんより、京都市青少年科学センター内に同プロジェクトのコンセプトを具現化した体験型の展示を作りたいとの相談がありました。
Approach
プラネタリウムへの期待感を高め、新しい人の流れをつくる
今回の展示場所は、常設の展示エリアとプラネタリウムをつなぐ間にあり、来館者が一休みする休憩スペースの前です。そこで、プラネタリウムに向かうお客様のわくわく感を高め、また、プラネタリウムから出てきた人の宇宙への関心をさらに高めることを期待し、展示のテーマを「宇宙」に設定しました。
従来は柱と壁の間をパネルで塞いで展示スペースを確保していました。そのため、壁の向こう側にある実験コーナーやお手洗いが隠れてしまい、休憩スペースのお客様に気づかれにくい状況でした。そこで、今回は塞いでいたパネルを撤去し、柱のまわりと壁面の展示エリアを2つに分けることで、休憩スペースから展示の向こう側へ抜ける、新しい人の流れをつくりたいと考えました。

理解をうながす「説明」よりも、驚きや疑問を生みだす「体験と観察」を大事に
今回の展示では「こどもたちが自発的に不思議を見つける」ことを大事にしたかったため、科学技術の理解をうながす詳しい「説明」は必要最低限にとどめ、驚き〈おっ!すごい!〉や、疑問〈あれ?なんでだろう?〉が生まれるきっかけとなる「体験と観察」を中心に据えました。展示の目玉は、宇宙まで飛び出すロケットの力について考える「空気ロケット」と惑星による重さの感じ方の違いを体感する「重さくらべ」の体験です。また、惑星をじっくり観察する展示パネルや、疑問をうながす「問いカード」を散りばめました。
身近なものをきっかけに、宇宙での生活を想像する
こどもたちにとって宇宙はあまり身近なテーマではないかもしれません。今回の展示では、ロケットを打ち上げる推進力について空気を勢いよく押し出す反動を利用していることを伝え、空気ポンプや風船など、こどもたちにとって身近なものと結びつける工夫をしました。また、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の写真や1日の時間の使い方を紹介し、食事は何を食べるの? 歯みがきはどうするの? など、宇宙での生活を想像するように工夫をしました。
展示での体験をさらに深めるワークショップも実施

完成後には、展示に関連する科学技術についての体験をさらに深める、2種類のワークショップを企画・実施しました。ひとつは「空気ロケット」の展示にちなんだ内容です。ロケットが飛ぶ仕組みを風船に置き換えて、自由に羽根を貼っていろんな形の風船ロケットをつくり、どんなふうに飛ぶか実験を重ねる内容を企画しました。もうひとつは「重さくらべ」の展示に関連する内容です。重力や大気の流れなどの影響でできると考えられている木星の渦に思いをめぐらしながら、「マーブリング」という技法で遊ぶワークショップを考えました。
Outcome 1
新展示「ふしぎを見つける宇宙の旅」の製作
全体

展示は大きく2つのエリアに分かれています。向かって左側が、宇宙まで飛び出すロケットの力や宇宙での生活を想像する「とびだせ宇宙へ!」、向かって右側が、惑星による重さの感じ方の違いを体感する「惑星での重さくらべ」です。
エリア1「とびだせ宇宙へ!」

手前のハンドルを上げ下げして圧力を高めてからボタンを押すと……ボンッ!! と勢いよく空気が噴き出して、筒の中の白いロケットが飛び出します。地上から100kmの宇宙まで行けるかな?


柱の左側では、なぜこんなに重いロケットを宇宙まで打ち上げられるのか? について考えます。柱の右側では、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の画像や1日の生活を見ながら、食事、風呂、睡眠、自由時間など、宇宙での生活について想像します。


エリア2「惑星での重さくらべ」

水、金、地、火、木、土、天、海 ──。太陽系には、12の惑星が太陽のまわりを回っています。重さ1kgの水筒を、もしそれぞれの惑星で持ったら、どんなふうに感じるでしょうか? テーブルにずらりと並んでいるのは、惑星ごとの重さを表現した水筒です。ぜひ展示でいろいろ持ち上げて、くらべてみてください! 太陽、火星、木星の表面や、土星の環を観察するパネルもあります。


Outcome 2
新展示完成記念ワークショップの実践
風船ロケット発射!──宇宙へ飛ばせ! 作用反作用のひみつ

日時 2025年3月22日
場所 京都市青少年科学センター
ロケットは、勢いよくガスを噴き出す力の反動を利用して宇宙まで飛び上がります。膨らませた風船の口から手を離すと、風船が前に飛んでいくのも同じ原理です。ワークショップでは、参加者のこどもたちが風船に自由に羽根を貼りつけて、いろんな形の風船ロケットをつくり、どんなふうに飛んでいくのか試行錯誤しながら、実験を繰り返しました。




重力と模様のふしぎ──木星をマーブリングで表現しよう!

日時 2025年3月22日
場所 京都市青少年科学センター
木星の表面にはどうして渦ができるのでしょうか。ワークショップでは、重力や大気の流れなどの影響で渦ができる謎に思いをめぐらしながら「マーブリング」を体験しました。赤、黄、緑、青、金……いろんな絵の具をスポイトで水に垂らして竹ひごで引っ掻くと、絵の具が入り乱れて渦模様ができました。参加したこどもたちは、その模様を紙に写し取り、偶然が生んだ模様を眺めました。最後に、けん玉を渦模様に染めて、木星の渦模様のようなけん玉をつくりました。






Voice
稲盛財団 広報部長 平川 直希さん
稲盛財団では「こどものキヅキ応援プロジェクト」の一環として、京都市青少年科学センターに新しい展示「ふしぎを見つける宇宙の旅」を公開しました。本展示では、説明を読むだけでなく、こどもたち自身が観察し、体験する中で「ふしぎ」に気づけるような仕掛けを取り入れています。公開を記念して開催したワークショップでは、目を輝かせて夢中になるこどもたちの姿がとても印象的でした。展示やワークショップを一緒に創り上げてくださった「つくるまなぶ京都町家科学館」の皆さまには、心から感謝しています。今後も、こどもたちの好奇心を育む活動を、より多くのこどもたちに届けてまいります。
- プロジェクトの始め方
- 「OpEL.」とのプロジェクトが始まったご相談の例をまとめました。
ワークショップをやりたい、展示をつくりたいなど、お気軽にご相談ください。 - プロジェクトの始め方はこちらから